「未来からの留学生」に向けて。 — ベネッセコーポレーション 福島保社長

大学全入時代と呼ばれる現在、大学進学の学力的な障壁は低くなっており、高校・大学生の学習時間や学びの意欲も以前より減っている。東大早慶を目指すようなトップ層の学力に大きな変化は見られないが、中下位層の生徒の学力低下は著しい。ところで、最高学府=東京大学のように誤用されがちだが、本来、最高学府とは「大学」を意味する言葉である。最高の学府を名乗っていながら中学レベルの内容を教える大学すら多数存在する現状のままでは、乱立した私立大学が淘汰される日も近いであろうが、今後の社会において「教育」をどのように捉えてゆけばいいのか。日本全国の0~18歳の5人に1人が受講しているという通信講座「こどもちゃれんじ」」や「進研ゼミ」などの教育ビジネスを展開し、日本の教育業界を牽引するベネッセコーポレーションの福島社長にお話を伺った。

「待ったなしのグローバル化にさらされている昨今だが、現在の日本の教育では、近現代から現在に至る外国との関係性や自国の立ち位置すら十分には教えていない。今のままで、グローバルな世界との“対話”が成立するのだろうか」̶とは福島社長。確かに、現行の学校教育、例えば歴史の授業では、古代、中世の歴史に比べて、現代史は深く教えない。日本文化や実際の社会の仕組みを学ぶ機会も少ないだろう。「グローバル化が進み多様性の中で生きていくには、自国の歴史を理解していることだけでなく文化、哲学、宗教感や教養等が問われる。しかし、今の日本人はそのような教育を受けていない。受験に出ないから誰も勉強しない。」(福島)

 

極論、受験科目だけ勉強していれば東大に入れるし、日本の歴史を知らなくても、社会問題にまったくの無関心でも、一般には東大生=優秀な学生と見なされる。しかし、これでは一流大学生というより、単なる優秀な学生でしかないだろう。

では、東大を頂点としたヒエラルキー的な学歴の構図は、今後どのような意味を持つのだろうか。「学歴とは、進路の幅、将来の選択肢を広げるものであるととらえている。医学部や法学部のように学歴資格を持たないとできない職業はある。しかし、そもそも私は、日本は学歴社会、つまり学歴によって将来の成功が約束された社会、ではないと思う」と福島社長は言う。

大学受験に成功した程度で満足してはいけないが、その成功体験は確かに将来の糧となるはずだ。もちろん、「教 育=学力」ではないし、知育だけで教育を語ることはできまい。「勉強は選択肢を広げ、リスクを減らす。自分が生きる上での可能性につながる」ものであり、「進研ゼミだけで生き方や世界観の広がりまでサポートすることはなかなか難しいが、家庭や学校、地域と連携しながら、子どもたち1人ひとりが自分の可能性をどう広げていくか。その広がりや気付きを与えてあげるのが私たちの仕事」-福島社長はこう語ってくれた。

東京大学/馬場嵜